HOME>ミツバチの生態 >賢い子育て
                             

賢い子育て

花粉だらけのミツバチ   

子育ては、若い働き蜂の担当です。 彼女たちは、頭部にある特殊な腺から分泌した乳物質-ローヤルゼリー-を幼虫に与えて育てます。

 

■巣穴の大きさで卵が産み分けられる

女王蜂は、一日に1000〜2000個もの卵を産みます。 これは一分間に1〜2個のペースで、毎日自分の体重と同じだけの卵を産んでいることになります。 (現在、妊婦の私にとって恐ろしい話ですw) 彼女は宮廷蜂に囲まれながら、巣内の産卵(育児)場所できれいに清掃された空の巣房を見つけ、一つずつ卵を産み付けていきます。 その際に、前足で巣房の直径を計り、通常サイズであればメスの個体になる受精卵を、 普通より大きければ(1mmほどの差)オスの個体になる未受精卵を産みます。 僅かな差を前足で測って産み分けるとは、なんともけなげですね。 これで分かるとおり、メスかオスかを決めているのは女王蜂ではなく巣房を作る建築バチたちです。 さらに言えば、やはりコロニー全体の意志というわけですね。

 

■ローヤルゼリーと花粉団子

育児中の巣房を覗くと、白い幼虫が白いミルクの中に浸かっているのが見えます。 このミルクは、羽化後5〜15日くらいの若い働き蜂の頭部にある下咽頭腺と大顎下腺から出る分泌物の混合物で、 これをローヤルゼリーを呼んでいます。 健康食品としてよく登場しますが、この希少な物質をかき集めたものなのです (正確に言うと人間のためにコロニーに細工をして大量生産させている)。 ちなみに、育児担当でなくなった働き蜂では、これらの腺は退縮します。 ただし、何らかの理由でまた育児担当になれば、再活性化するという…なんともすばらしい能力ですね。

ローヤルゼリーはすべての幼虫に与えられますが、女王蜂になる幼虫とその他では与えられる量が異なっています。 通常バチだと、幼虫が大きくなるにつれてミルクに混ぜられる花粉と蜜の量が増えていき、 最後の齢にはミルクを卒業して花粉と蜜の団子だけになります。 これが女王蜂であれば、他に比べて頻繁にミルクを与えられ、しかも最後の齢になってもミルクで育てられるのです。 なお、女王蜂になる卵と働き蜂になる卵は、卵自体に違いはありません。 この幼虫期の餌の与え方自体が発生に影響を与えているのです。 これもまた、働き蜂集団に新女王を育成する権限が与えられていると見ることが出来る例ですね。

 

■加熱活動

幼虫はやがて大きくなり、育児バチによって巣房の蓋がされて蛹になります。 孤独な大人への道です。この蛹の期間中、育児バチたちは飛翔筋を収縮して熱を発生し、蛹を温めます(約33〜36℃)。 巣房の蓋の上から体を押し付けて温めたり、育児圏に5〜10%の率である空(カラ)の巣房に潜り込んで発熱し、隣接する巣房を温めたりするのです。 赤ちゃんを暖めてあげるのは、鳥や哺乳類だけではないんですね。

逆に真夏など、巣内の温度が高すぎるときは、水の幕を巣房の蓋の上につくり、 気化熱で冷やしたり、巣の入り口で換気活動を行ったりします。 そう考えると、ミツバチはかなり巣内の温度調節を労力をかけて行っています。 他の昆虫が外気温のなすがままになっているのを考えると、大変な環境制御を行っていることになりますね。

 

■誕生、掃除担当へ

蛹期間が終わると、新生のハチが育児バチの助けを得ながら巣房の蓋を破って羽化してきます。 働き蜂の場合、最初のお仕事は大抵この自分が使っていた巣房を徹底的に掃除することです。 ミツバチは本当にきれい好きで、卵が産み付けられた巣房は、卵以外にチリひとつありません。 そのうち、新米の働き蜂にもきっとだんだんとコロニーの全体の意志が感じられるようになるのでしょう。 人手不足の仕事場へ自分から進んで出かけていくはずです。

           
     
  
Copy Right(C)2012 著作権の表示 All rights reserved.   
inserted by FC2 system